イメージベース構造解析ソフトウェア
VOXELCON

事例2 現物データを用いた マクロ物性値の評価
    ~ 多孔質材料や複合材料の物性値算出 ~

■概要

材料設計において、セラミックスや発泡金属といった多孔質材料や、FRPに代表される複合材料などのマクロ的な機械的性質を調べることは、非常に重要です。
実際のサンプルがある場合、一般的には実験によってそれらを計測することも可能ですが、材料の性質やサンプルの状態によっては、必ずしも実験が容易でない場合もあります。

ここでは、実際のサンプルをマイクロX線CTスキャナでスキャンして得られる断層画像から、 VOXELCONイメージベースモデリング機能均質化解析機能を利用して、サンプルのマクロ物性値を解析により算出する例をご紹介します。

注)多孔質材料や複合材料を構成している元の材料の物性値は、事前に得られているものとします。

■解析モデル

高解像度X線CTスキャナによって得られた断層画像をVOXELCONに読み込み、2値化を行って解析モデルを作成します。

  • CT画像


    CT画像
  • モデリング
    ⇒
  • 解析モデル
    解析モデル

提供:ファインセラミックス技術研究組合/財団法人ファインセラミックスセンター様

    ≪孔の分布≫
  • モデルサイズ
     728×720×324 [μm]
  • 1ボクセルの大きさ
     4 [μm]
  • 要素数
     2,457,079
  • 気孔率
     7.4%
  • 母材の物性値
     ヤング率:405 [GPa]
     ポアソン比:0.24
  • 孔の分布

■均質化解析結果

モデルができあがれば、すぐに均質化解析が可能です。
境界条件等の設定は一切不要です
均質化解析により、下記の等価物性値が得られました。

マクロ等価物性値(完全異方性Dマトリクス 21成分)

  X Y Z XY YZ ZX
X 0.4045E+03 0.1242E+03 0.1228E+03 -0.5891E+00 0.1236E+00 0.6831E+00
Y   0.4038E+03 0.1226E+03 -0.6765E+00 -0.3443E+00 0.7157E-01
Z     0.3953E+03 0.6037E-02 -0.2353E+00 0.7069E+00
XY       0.1401E+03 0.2437E+00 0.7422E-01
YZ   Sym.     0.1378E+03 -0.8739E-01
ZX           0.1382E+03

さらに、直交異方性と仮定した場合のマクロ等価物性値は次のようになります。

直交異方性を仮定した場合のマクロ等価物性値

ヤング率[GPa] Ex = 346.04 Ey = 345.56 Ez = 338.32
ポアソン比 Vxy = 0.23537 Vyz = 0.23710 Vzx = 0.23234
せん断弾性率[GPa] Gxy = 140.15 Gyz = 137.81 Gzx = 138.17

向きによって多少ヤング率に違いが出ていますが、概ね母材のヤング率 405[GPa] の84%前後の値になっており、単純に気孔率の分だけヤング率を少なく見積って得られる値よりも、小さな値になっています。

≪計算機および計算時間≫

  • 計算機:Intel(R) Core2 Quad 2.66GHz (4コアによる並列実行)
  • 解析時間:29分30秒
  • 使用メモリ:946 [MB]

■検証

解析

VOXELCON にて、下図のように直接荷重を負荷したときのひずみ量を調べ、均質化解析結果として得られたマクロ物性値の妥当性を検証します。

検証解析条件

結果

  • X変位分布図
    X変位分布図
  • モデルのX方向寸法(硬い部分は除く)
     L=728.0 [μm]

    荷重負荷面のX変位の平均値
     ΔL=2.083 [μm]

    よって、X方向のひずみは、
     ΔL/L=2.86×10-3

一方、均質化解析の結果から得られた等価物性値を使って、X方向に1 GPa の荷重が負荷された場合のひずみを考えると、

X方向の等価ヤング率
  E=346.0 [GPa]

により、X方向のひずみは、
  1/E=2.89×10-3  !検証解析の結果として得られたひずみとの誤差:約1.0%!

したがって、均質化解析の結果得られた等価物性値は、実用上、十分妥当な結果と考えられます。

■実験値との比較

本例題で用いたファインセラミックスの均質化法による計算結果と実験値とを比較した研究結果をご紹介します。

計算値&実験値の比較グラフ 均質化法で得られる等価物性値が実験結果とよく一致していることがわかります。

※ 木村圭一、高野直樹、久保弘、小川秋水、河本洋、座古勝:
日本セラミックス協会学術論文集、第110巻、通巻1282号(2002年6月)、pp.567-575
「セラミックス多孔体のイメージベースモデリングと均質化法による弾性解析」


■考察

実験が困難な場合でも、本例題のように"サンプルのCT画像"と"母材の物性値"があれば、VOXELCONイメージベースモデリング機能均質化解析機能 を用いてマクロ物性値を得ることができます。 これは一種の数値材料試験と位置付けることができます。

また均質化法により、構造特性を考慮した物性値を得ることができますので、気孔率からの単純な類推よりも正確なマクロ物性値を得ることができます。

さらに VOXELCON の均質化解析は、各方向の引張り試験およびせん断試験を連続して行うことに相当しますので、繊維強化材の繊維方向と直交方向など、向きによってマクロ物性が大きく異なるような場合には特に有効です。

本例題の内容を応用すると、実際の実験結果とCT画像から、母材の物性値を逆同定することも可能です。


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