OPTISHAPE-TS発売20周年記念コラム:OPTISHAPE-TSの歩みと開発秘話

第3話 OPTISHAPE-TS 2004 その2

はじめに

OPTISHAPE-TS 20 周年コラムを引き続きご覧いただきありがとうございます。
早いもので、東京ではそろそろ桜が開花する時節になって参りました。

第3話となる今回は、前回に引き続き最初のバージョンである OPTISHAPE-TS 2004 を皆様と一緒に見ていこうと思います。

機能比較

最適化機能

まずは OPTISHAPE-TS の最適化機能の機能比較から見ていきましょう。

 2004

  • 位相最適化
  • 形状最適化
  • 逐次外表面位相最適化

 現在(2022r1)

  • トポロジー最適化
  • 形状最適化
  • ビード最適化

第1話でも触れましたが、位相最適化とトポロジー最適化は呼び方を変えただけで同じものを指します。 ただしバージョン 2004 当時の位相最適化と現在最新版のバージョン 2022r1 のトポロジー最適化の中身を比べてみると、まったく同じものという訳ではありません。

今のトポロジー最適化はバージョン 2008 で刷新されたトポロジー最適化をベースとしています。 バージョン 2004 では「均質化法」と「密度法」という 2 つの手法が利用可能だったのに対して、このトポロジー最適化は「密度法」のみに統一。 また、多制約問題の安定性向上などを目的として \(H^{1}\) 勾配法に基づく手法を採用したり、 形状最適化とのソースコードの大幅な共通化が図られ、それ以前のものとは別のものとなっております。 そのため、新しいトポロジー最適化をリリースしたバージョン 2008 から数年間は、新旧2つのトポロジー最適化を両方とも利用できる時期があったほどです。

形状最適化は、基本的には当時を引き継いで開発が行われており、トポロジー最適化のようなアルゴリズムの変更を伴う大規模な改修は行われていません。 その一方で、トポロジー最適化と比べると多くの評価関数や解析が追加されています。このあたりは後ほど紹介させていただきます。

ビード最適化はバージョン 2016 で追加された最適化機能であり、OPTISHAPE-TS の歴史の中では比較的新しい最適化機能となります。

残るは消えた逐次外表面位相最適化という機能になります。 折角の機会なので、今は廃止されたこのユニークな機能について少し紹介したいと思います。

逐次外表面位相最適化とは

通常のトポロジー最適化は、工夫をしないと中空形状ができてしまう場合があります。 これは最適化問題として与えた問題に対する最適な形状という意味では正しい解ではありますが、製造上の観点からは明らかに作ることが出来ない形状であるため困るという問題がありました。

これを解決するために登場したのが逐次外表面位相最適化です。 この機能ではソリッドモデルの表面1層だけを対象にトポロジー最適化(位相最適化)を行い、密度の薄い要素を削除する操作を繰り返すことで、 必ず表面から要素を削り中空形状を避ける機能となっています。余談ではありますが、皮むきのように表面を削っていくことから英語版では Peeler という機能名になっています。

画像は結果の一例です。通常の位相最適化では中空形状となってしまう問題でも、逐次外表面位相最適化を使うことで中空形状を回避できていることが分かります。

面白い機能ではありますが型抜きを直接考慮するわけではないため、型抜きができない形状、例えばえぐれた形状などを回避できる保証はありません。 また、テトラメッシュに対してこの機能を使った場合には、結果形状の表面がガタガタになってしまう問題もあります。 この機能を使う際にはボクセルメッシュで最適化を行うことが多かったようですが、その場合には専用の解析モデルを作成する手間が生じてしまう問題もありました。

このような問題から後に「型抜きトポロジー最適化」という型抜きを直接考慮したトポロジー最適化が登場し、 逐次外表面位相最適化は旧トポロジー最適化の流れを汲むメンテナンスの難しさもあり、OPTISHAPE-TS から除外されることとなりました。 工夫によって生み出された機能であり独創的で面白くもありますので、少し詳しく「逐次外表面位相最適化」を紹介させていただきました。

評価関数の数から見る過去と現在

形状最適化とトポロジー最適化の評価関数の数も比較してみましょう。 製品のアップデート内容は多岐に渡るため評価関数の数だけを見てその評価が出来るわけではありませんが、単純な個数というのは比較する上でやはり一番わかりやすいです。

まず形状最適化を比べると、バージョン 2004 時点での利用可能な評価関数が 7 個であるのに対して、最新版のバージョン 2022r1 で利用可能な評価関数は 47 個と圧倒的に増えています。 以前の評価関数の内訳を今改めて見てみると最低限という印象をうけるかも知れません。 設計者向けに開発された HiramekiWorks でさえ、利用可能な評価関数の数という点で言えば当時の OPTISHAPE-TS よりも多いほどです。

増えた評価関数を細かく見てみると、例えば「最大主応力」「変位」などのように同じ静弾性解析の中で評価できる項目が増えた関数もあれば、 周波数応答解析や線形座屈解析のように解析自体が増えた関数もあります。 また項目だけでは見えない話ではありますが、例えば昔からある「最大 Mises 応力」は途中から評価する領域を指定できるようになったりと、同じ関数内でもアップデートは随時行われています。

同様にトポロジー最適化も見ていきましょう。バージョン 2004 のときには体積や質量を制約にする問題のみ利用可能という制限をかけていたようで、今とは設定画面の勝手が異なります。 ただ使える評価関数という観点で見ると、今も昔も静弾性解析、固有値解析の範囲が中心であり、増えた評価関数自体も「変位」「変位の大きさ」「反力」と限定的です。

トポロジー最適化に関しては評価関数以外のアップデートがメインとなっています。 例えば中の手法が刷新されたり、型抜き機能などの製造制約に関する機能が増えたり、ポスト処理の部分が強化されたりといった内容です。 現在も今後のバージョンに向けてメンバーサイズ機能を開発中です。

パラメータ作成ツール

OPTISHAPE-TS は昔から有限要素モデル(BDFファイル)と独自の最適化パラメータファイルの 2 つを指定してソルバーを実行するため、最適化パラメータファイルを作成するためのツールが付属していました。

画像はバージョン 2004 当時の最適化パラメータ作成用のツールです。 現在は TS Studio 内の同様の機能にてモデルを見ながらパラメータを作成できるようになり、本ツールは提供を終了しています。

当時の OPTISHAPE-TS はモデル編集機能を持たなかったため、CAD やご利用のプリプロセッサでプロパティ分けや座標系を作成した後、 そのデータを参照する形で最適化パラメータを作成するという形式を取っていました。 そのため、例えば型抜きの方向を指定するのに座標系を、非設計や応力の評価領域の指定にプロパティを指定したりします。 この仕様は現在でも引き継がれていますが、最近では「方向を X, Y, Z 成分で直接指定したい」とか 「領域を要素IDで指定したい」などの要望に加えてこの仕様が自動化の際の弊害となる場合もあり、長期的には改良することも視野に入れて考えています。

最適化パラメータ作成ツールは一見すると TS Studio 内の最適化パラメータ作成機能と大きく異なるように見えますが、 「次へ」「戻る」ボタンでページを切り替えるウィザード形式という点や、 項目を変更して「追加」「削除」ボタンでリストに反映させる点など、今でも使い勝手の面で思想を引き継いでいる点があります。

ポスト処理

最後にポスト処理についても触れておきましょう。下の画像はバージョン 2004 からしばらく使わていた簡易ポストプロセッサ GIWorks です。現在は後継として TS Studio がポスト処理を担っており、本ソフトを使うことはできません。

GIWorks は今の TS Studio とは違いポスト処理に使うファイルも弊社独自のものとなっていました。 また、ポスト処理専用であり結果のコンター図、変形図、等値面、最適化の結果形状など基本的な機能は網羅されておりますが、モデルの編集機能や「形状拘束用 MPC の作成」「一次要素の有限要素モデルを作成」「等値面からテトラモデルを作成」などの OPTISHAPE-TS 固有の便利機能、最適化パラメータの作成機能などはありませんでした。 そして今回初めて知ったのですが、バージョン 2004 当時は英語版しかなかったようです。

一見すると現在の TS Studio とはまったく異なるソフトウェアに見えます。実際、中身は全くの別物でありますが、その一方で操作感は未だに引き継がれている部分もあります。

上の画像は操作感が引き継がれている箇所を簡単に図にしてみたものです。 こんな感じで少しではありますが、操作感が引き継がれている箇所が残っています。

最後に小話

現在の TS Studio は元々 GIWorks の置き換えを目的に開発されたもので、しばらくの間は名前も Viewer でした。 GIWorks と TS Studio の違いは色々とありますが、今回お話するのはモデルの背景色。

背景色のデフォルトは古いCADやプリポストでは黒背景、最近では上から下に違う色のグラデーションが主流かと思います。どんな色にするかは各製品で個性が出る部分ですよね。 一方の TS Studio はというとデフォルトは白一色。上下違う色のグラデーションも設定を変更すれば可能ですが、デフォルトは白。 実はこれは Viewer 時代の名残で、結果確認を主体とするソフトウェアとして「資料作成のときに背景が白い方が画像の切り抜きが楽」という単純な理由だったりします。

弊社製品でもモデルの編集や操作を主眼とした S-GeneratorVOXELCON ではグラデーション背景がデフォルトになっています。 単に背景色ひとつ見ても、ソフトウェアの設計思想が現れているというお話でした。

おわりに

前回に引き続き OPTISHAPE-TS 2004 を最新版との比較という形で紹介してみました。 この 20 年の中で機能は大幅に強化され、廃止された機能やツールもある一方、引き継がれている設計思想や使い勝手もあるという点を多少なりともお伝えできたかなと思います。 次回は同じように約 10 年後のバージョンである OPTISHAPE-TS 2014 がどのようなソフトウェアだったか見ていこうと思います。

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2024年3月27日
株式会社くいんと 技術開発部
OPTISHAPE-TS プロダクトリーダー
島田 誠


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