Column 141. この半世紀における構造解析ソフトウェアの変遷と弊社のソフトウェア開発

あとがき - Column 141.の連載を終えて -

新型コロナウィルスの感染状況が深刻化した4月の中旬から5月の連休明けにかけてコツコツ書いたColumn 141.(全10話)は、 その後半年間でホームページにおける連載が終了致しました。 この間、多くの方々から数々の暖かいお言葉を頂戴し、心から感謝を申し上げる次第です。

半年経った現在、新型コロナウィルスの感染状況は第3波の様相を呈し、状況はさらに深刻化しています。 長期戦を覚悟するとともに、新しいスタイルの生活様式、ワークスタイルに早く適合しなければならないことを再認識致しました。

さて、これ迄に第3話の内容について、2箇所間違いのご指摘を賜りました。ここに訂正を掲載させていただきます。

◎ 原文 :SDRC で I-DEAS を統括していた Cashman Jr.氏
  訂正後:SDRC で Meta phase などの新規事業を手掛けた Cashman Jr.氏
  *SDRCでI-DEASの責任者を務め、当時のHKS Inc.(ABAQUSの開発元)の
   CEOに転じたM. Goldstein氏と混同してしまいました。お詫び致します。

◎ 原文 :AdamsやRecurDyne
  訂正後:AdamsやRecurDyn
  *お詫び致します。


コロナ禍により、様々な事を今までと同じスタイルで行うことは出来ず、会社の最大行事である、年に1回のお客様同士の交流を目的とした 「くいんと交流会」も例外ではありません。

何とかお客様との交流を図る手立てはないものか社員で話し合った結果、若い人達の意見で、片側通行にはなってしまいますが、 YouTubeによる動画を発信しようということになりました。

我々が作っているソフトウェアの開発者によるプレゼン動画、普段からお客様に対してきめ細かな技術サポートを提供している 技術者からの効果的なソフトウェアの利用法提案動画、そして元々会社創立35周年の基調講演をお願いしていた、 菊池 昇 ミシガン大学 名誉教授/株式会社豊田中央研究所 代表取締役所長 と 畔上 秀幸 名古屋大学 教授 による「オンライン対談」を 実施することになりました。

既にColumn 141.で紹介したように、菊池先生は長年ミシガン大学で教鞭をとり、「連続体のトポロジー最適化」のパイオニアとして世界で広く知られています。 一方、畔上先生は形状最適化理論を四半世紀に渡り研究され、近年「H1勾配法によるノンパラメトリック形状最適化」を完成させたパイオニアです。 この2人の対談は、構造最適化の業務に携わる技術者にとっては、豪華なスーパースターの夢の競演であり、 私にとってはコロナが実現してくれた「真夏の夜の夢」のような出来事でした。

両先生に伺ってみたいことは山程ありました。 しかし、画面の向こうで何百人の方々が楽しみに聞いて下さっている姿を想像すると、聴講者の代表として、 参加して下さった方々に思いを馳せることが大事であり、色々悩みました。 結局「あーでもないこーでもない」と行ったり来たりしているうちに、時間切れとなり、自分の聞いてみたいことを 素直にぶつけてみようということで、当日を迎えました。(スミマセン!)

尚、あれもこれも社員全員が初めての経験で、素人なりの気概を見せたのですが、 そのような中、弊社マーケティング担当部長のSが綿密な計画を立て、女性の細かい気配りで曲がりなりにも企画が完成したことは、 今後に大きな希望を残しました。

先生方には、事前に以下のような項目をお送りしました。

  1. 有限要素法、構造最適化が生まれた時代
    Turnerらの論文で始まったFEMですが、数学者Courant、土木工学のClough、航空工学のMartin、Boeingの技術者Turner らがそれぞれ果たした役割を、故Martin先生の遺品のノートを調べたことがある菊池先生にお伺いします。
  2. 畔上先生は、文科省の在外研究でミシガン大学に滞在されましたが、ミシガン大学を選ばれた理由と、 当時の世界の構造最適化の研究の状況などをお伺いします。
  3. 1980年、菊池先生が赴任されたミシガン大学は、デトロイトを中心に大不況でした。
    そのような中、たった数年でミシガン大学はどん底から大改革に成功し、勢いを取り戻しています。 少子化に悩む日本の大学にも参考になると思いますので、当時の改革の状況をお話ください。
  4. 形状最適化理論は、関数解析をはじめとする数学理論で構成されています。 畔上先生が直接数学に興味を持たれたきっかけを教えて下さい。
  5. トポロジー最適化は、今や製造業では当たり前の技術として日常使われています。 菊池先生が1988年にBendsoe先生と出された論文は、30年が経過しているにもかかわらず、 いまだに多くの研究者からリファレンスされています。このようなユニークな発想に至った経緯を是非ご紹介願います。
  6. ノンパラメトリック形状最適化手法が、成長歪み法から力法、H1勾配法へと発展した経緯を畔上先生にお伺いします。
  7. AIの発展がもたらす未来について、特に設計を意識して菊池先生にお伺いします。
  8. 菊池先生、畔上先生に「若い技術者、研究者に伝えたい言葉」をいただきたいと思います。
  9. これまでに「くいんとセミナー」が果たした役割について(石井)

上記項目について、オンラインでお互いに顔色を確認しながら対談は進んだのですが、それぞれ熱く語っていただき、 とても全部を既定の時間の中ではお話することができませんでした。
( 内容は下記リンクからご登録いただき是非直接ご覧下さい。)

特にトポロジー最適化については全く触れるチャンスがありませんでした。これは司会の不手際によるもので、別のチャンスに再挑戦したいと考えております。

その時は、司会ももっとリラックスして臨もうと、皮算用はしておりますが、どうなりますことやら...。


2020.11.18 オフィスにて. 
石井 惠三 


★上記対談を含む動画のご視聴はこちらから★
くいんと交流会 - Extra Edition 2020 -

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第10話 | end

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